Micro Ambient Music Festival @ ICC 2024年2月23日~25日

初台のICCで行われている坂本龍一トリビュート展の関連イヴェントとして3日間にわたり行われたMicro Ambient Music Festival に行ってきました。

 

一日あたり3セッションのLIVEが行われ、1つのセッションには3つのLIVEがあり、それぞれ会場を移動します。3日間で計27のLIVEが行われました。

 

一日目 1stセッション

第一会場 11:30~12:10

 

池田陽子

第一会場は3つの会場の中で一番小さな会場で至近距離から演奏を楽しめる。

池田陽子さんはバイオリンの演奏で、曲っぽい演奏ではなく、弦のこすれなど

バイオリン自体からでる音のアンビエンスを聴かせるという体で、新鮮な体験

でした。通しで40分近く集中して演奏し続けるのはとてもたいへんだったと

思います。

 

一日目 1stセッション

第二会場 12:20~13:00

 

中村としまる

第二会場は小さめの体育館といった広めの会場に扇状にマットレスが配置されていて

自分のリストバンドの色と番号のマットレスに寝転がり演奏を楽しみます。

眠ってしまってもいいのです。

「みなさ~ん、お昼寝の時間ですよ~」という中村さんの掛け声とともに始まりました。眠れるような音ではなかったが、なぜかここちよい。

終わってから、「これじゃ眠れませんよねw」と中村さん。

ハンチングにサングラスでこわい方かと思ったのですが、終演後質問してみると

親切に説明してくれました。ミキサーとエフェクターのみでシステムを組み立てて

いるのですが、外部から音ネタは一切入れずにケーブルを自作して、ミキサーと

エフェクターの音を相互にフィードバックさせて独特な音を醸しているということです。

 

一日目 1stセッション

第三会場 13:15~13:55

 

ASUNA

第三会場は中央に正方形のステージがあり、それを取り囲むように客席が配置されている。ASUNAさんと山崎美帆(daborabo)さんによるパフォーマンスは3つのシーンからなっていた。

Scene 1 《玩具鍵盤よる思い出の計測》

ステージの角に十数本くらいの粘着テープがぶら下がっていてそれに小さな玩具を次々と貼り付けていく。玩具は程なく落下するが、下にはおもちゃのグロッケンやシンバルなどが置いてあり、音をかなでる。ステージ下に置いてある無数のおもちゃのキーボードを裏返し、その下に置いたおもちゃによって音を出し、ドローン音を作り出していく。

 

Scene 2 《別れる前の恋人たちによる骰子ゲーム》

スネアドラムの前に座ったカップルが、スネアドラムの表面に置かれた小さなタッチパネル式のシンセをサイコロを交互に振りながら、乾電池を移動させていき、乾電池のマイナス極をタッチパネル部分に置くことによって演奏をすすめていく。

 

Scene 3《午後の膜鳴楽器》

オシレーターにより振動するフロアタムの机で食事をする二人。小さな皿をフロアタムの上に置き、カラフルな丸いお菓子を入れていくが振動で弾けとび様々な音がぶつかりあう。膜鳴楽器の振動によって思い通りに進まない昼の食事風景が演じられたということです。

 

一日目 2ndセッション

第一会場 14:50~15:30

 

大城真

第一会場と第二会場でPAを担当していた大城さんのパフォーマンス。

角銅真実さんのアルバムのレコーディングエンジニアであるということもサンレコで知りました。

向かい合わせに置かれた中くらいのアンプの間に、出力から入力にシールドを繋いだミニアンプが9台、自作と思われる20cm角のアンプ付スピーカーが2台置かれていて不穏な雰囲気。大城さんが現れ、ミニアンプのスイッチを一台ずつ入れ、音を調整しつつ、部屋の各所にランダムにおいていき、ドローン音を構築していく。ミニアンプは9台のうち7台を使用した。好きな人にはハマる音だがこういう音が苦手な人にとっては◯問になってしまう。

 

一日目 2ndセッション

第二会場 15:40~16:20

 

クリストフ・シャルル

幽玄なるアンビエント。必ずしも心地よい音だけではなく、刺激的な音も多かったが、

心地よい。

 

一日目 2ndセッション

第三会場 16:35~17:15

 

The Factors

Singer-songwriter SAKiとGuitarist / Composer Jody Tenkuさんによるユニット。

前半は美しい声の断片でマイクロアンビエント音楽が表現されていた。

SAKiさんの衣装もエキゾティックで素敵。

後半は歌い上げる曲も数曲。今回出た27組のうちで最もオーバーグラウンドで活躍するのにふさわしいグループではないかと感じました。(もうすでにオーバーグラウンド活躍していたらごめんなさい。)

 

一日目 3rdセッション

第一会場 17:35~18:15

 

Minoru Sato

最初はピタゴラス25音階で作られた曲によるパフォーマンス。

クルクル回る針金状のものにプロジェクションして模様と音が変化していく。

 

一日目 3rdセッション

第二会場 18:25~19:05

 

小野寺唯

マットレスの上で心地よく意識が飛んでしまい、記憶が定かではないのですが、

かなり激しい音がしていた気がしています。

 

一日目 3rdセッション

第三会場 19:20~20:00

 

Filament(Sachko M,大友良英)

教授への追悼ということで久しぶりにFilamentをやりますとXでアナウンスしていた大友良英さん。大友さんのターンテーブルの前に座って鑑賞した。Sachko Mは大友さんとは背中合わせでの配置だったので、姿はこちらからは見えなかった。大友さんはギターは使用せずターンテーブルのみ。ターンテーブルの上にコピー用紙を置きその上に針を置いてノイズを出す。カートリッジに直接配線してミキサーに入れる装置も作っていた。

シンバルをターンテーブルの大きさに合うようカットしたものを置いてその上に針を置いてノイズを出したり。コピー用紙を2つに折り曲げて置いて、こんなんで音が変わるのかと思っているとみごとにいい音が出る。Sachko Mさんから出るパルスを呼応するよな、音の会話をするように進行していった。

 

 

 

二日目 1stセッション

第一会場 11:30~12:10

 

Chihei Hatakeyama

モジュラーシンセによる演奏。

枕のお話では、学生時代バイトを探していて、和泉校舎の近くにメキシカンレストランとその斜向かいにファミレスがあるところがあって、メキシカンレストランの面接で、

最後に「尊敬する人は?」と聞かれ父親と教授と家康のうち、家康と答えてしまい、結果、バイトは落ちてしまい、教授と答えなかったことに関して教授にその後20年間、申し訳なく思っているというお話をしてくださいました。ファミレスのバイトは受かったそう。

 

 

 

二日目 1stセッション

第二会場 12:20~13:00

 

Sawako

演者の登壇はなく、音楽が始まり終了した。

終演後、出口で一枚の紙が配られた。

急病による入院で出席できなくなってしまったとのこと。

演奏のタイトルは「phantaz.ma 35° 68’N 139° 72’E」

古典ギリシャ語「可視化する」+「された結果」が、ラテン語の「phantasma」になって、「phantom(幻、幽霊、夢の存在」「fantasy(幻想)」「phase(現象)」の語源になったということからきているそう。「phantaz間」としたら「間の可視化」になるということです。

演奏の収録は信濃町の病院で行われ、病院の窓からは教授が最後まで活動を続け、守ろうとしていた神宮の森が美しく見えているそうです。

この方の作品からは「和」の雰囲気を強く感じました。

 

二日目 1stセッション

第三会場 13:15~13:55

 

H.A.M

hina(Dr.),Ami(Ba.),Milo(Gt.)によるエクスペリメンタルな3ピースバンド。

ドラムのhinaさんの、ポエトリーリーディングが印象的でした。

 

二日目 2ndセッション

第一会場 14:50~15:30

 

すずえり

小さなガジェット的機器が所せましと配線されている。

ハンディのカセットテープ再生機を二台会場の後方などに音を出してから配置し、

ステージ上にポータルラジオのノイズを出したものを置き、始まった。

ポータブル扇風機にライトを上からつけて、ソーラーパネルにかざすと音が様々に可変していくしくみ。

 

 

二日目 2ndセッション

第二会場 15:40~16:20

 

中村友胤

格調高い正統派のアンビエントサウンド。オーガニックでやさしい。ギターが心地よい。

 

二日目 2ndセッション

第三会場 16:35~17:15

 

Chappo

福原音(Gt., etc.),細野晴臣氏の孫である細野悠太(Ba., etc.)とドラムの海老原颯。

スケッチショウのステラやYMOのwild ambitions、これは悠太氏の歌唱でかなり長く演奏された。味のあるボーカルである。Pocketful of Rainbowsや持ち曲である「ふきだし」などが演奏された。

 

 

二日目 3rdセッション

第一会場 17:35~18:15

 

蓮沼執太

第一会場がはじめて満席になった。

ステージにはEMS Synthi AKSジルジャンのゴングという長方形のシンバルが置かれていて微妙に曲げられていて中央の丸くへこんだ部分にに水中マイクが置かれている。ロックアイスの袋を持って蓮沼氏登場。会場は張り詰めた雰囲気。

シンバルのへこんだ部分にビー玉を落としたり、石でシンバルをこすって音を出したり。会場にいた小さな女の子とパパはその音を聞いて出ていってしまった。おそらくマイクはAKSにつながっているようだったがシンセの音への影響はあまり感じられなかった。続いてロックアイスをシンバルのへこみに置いていく。水中マイクを動かすとなかなかいい音がした。

 



二日目 3rdセッション

第二会場 18:25~19:05

 

クリストファー・ウィリッツ

壮大なアンビエントミュージック。日本人アーティストに決してつくれないヨーロッパ的サウンドだった。

 

二日目 3rdセッション

第三会場 19:20~20:00

 

ILLUHA

伊達伯欣(だてともよし),コリー・フラー,ドラムに山本達久の3人編成。

伊達さんはこのフェスを企画された方。ダークで重厚感のあるアンビエントに独特なドラムサウンド

 

三日目 1stセッション

第一会場 11:30~12:10

 

石川高

笙の演奏を間近で聴けるなんてこんな機会は滅多にない。

会場に入ると石川高さんはポータブルの電気ヒーターで笙をクルクル回しながらしきりに温めていた。これは息が楽器の中で結露するのを防ぐためなのだそう。一曲終わるごとに2~3分温めなければならない。雅楽の古典曲を2曲、槻賀枝(つきがえ)という石川さんのオリジナル曲、けやきの枝の意味ということです。最後に即興演奏が行われました。2016年にニューヨークに演奏に行った際に教授から「お時間のある時にお越しください」ということで教授のスタジオに行き、教授のアルバム「async」の「life life」とアナログ盤のボーナス・トラックの「water state2」のレコーディングに参加されたということです。「water state2」は石川さんも教授も即興で、スタジオの別ブースだったのでちらりとしか見えなかったけれども教授の集中力は並々ならぬものがあったということです。4月に上演される教授のシアターピース「TIME」で笙を演奏される宮田まゆみさんは石川さんの師匠なんだそうです。

 

三日目 1stセッション

第二会場 12:20~13:00

 

Ken Ikeda

ラップトップを使わず独自のインターフェイスを構築されて演奏されているということでした。音はアンビエントというより正統派の電子音楽。黎明期のヨーロッパの電子音楽を感じました。今回第二会場で演奏された音楽でいちばん好きかも。

 

 

三日目 1stセッション

第三会場 13:15~13:55

 

角銅真実、巌裕美子、閑喜弦介

角銅真実さんにチェロの巌裕美子さん、ギターの閑喜弦介さんのお三方。

教授の追悼ということで、「hibari」が長時間演奏された。

角銅さんのニューアルバム「contact」からは「枕の中」などが演奏された。

一つ前のアルバムから「lullaby」が演奏された。

開演時に三人それぞれがスマホに吹き込んだものを終演時に椅子に並べて演者が立ち去ると角銅さんのコーラスのループに「hibari」のモチーフがループして流れ続けるという泣ける演出。教授も天上でニンマリしていることでしょう。

 

 

三日目 2ndセッション

第一会場 14:50~15:30

 

田中悠美子

会場に入ると三味線が机に横向きに置かれていて、様々な道具もある。

田中さんが入ってくると、三味線は机に置いたまま、ぐちゃぐちゃにした三味線の弦を胴のところに通してこすりつけて音を出したり、木琴のバチで胴を軽く叩いたり、教授がピアノでやっていた内部奏法の三味線版だ。とてもいい音がした。三味線を知り尽くした人でないと出せない音。後半には歌ものもあった。「恋といふ字に 身を捨て~」という歌詞から検索してみると、「鳥辺山」という浄瑠璃などの心中物の唄らしい。

義太夫に熱中するあまり小屋掛け興行をするようになり家産を傾けたという言い伝えのある私の曾祖父にきかせてあげたかった。

 

 

三日目 2ndセッション

第二会場 15:40~16:20

 

小久保隆

開始前に「パワーナップ」という短時間の昼寝を奨めていた。壇上においてある黒い石の塊はサヌカイト(黒曜石)という1300万年前の石を楽器に加工してもらったものだそう。アンビエント音楽というよりα波ミュージックのような健康に良さそうな毒のないサウンド

 

 

三日目 2ndセッション

第三会場 16:35~17:15

 

網守将平

教授作曲の未完の校歌を教授の依頼で完成させたという網守さんのステージ。

水が入ったブランデーグラスの縁に指を滑らせ音を出してからそれを少し飲んでから演奏スタート。prophet-6を操り壮大なアンビエント音楽。機材を揺さぶることにより、雷鳴を表現したりしていた。

 

三日目 3rdセッション

第一会場 17:35~18:15

 

秋山徹次

中央の小さなステージにはドラム用の丸い椅子にアコギが立てかけてあり、カポが4つもついている。不穏。長身で白髪、茶色い皮のハットの秋山氏登場。リストバンドには「神風」と書かれている。不穏。椅子に腰掛け目をつむり、ゆっくりと回転しながら、ギターにペーパーナイフを挟み、文鎮で弦をこすり持続音を出し続ける。不穏。だがいい音。終始目をつむり、ゆっくり回りながら、カポを1つづつ外して音を変化させつつ文鎮で音を出していく。不穏。だがとてもいい音。かっこよすぎます。

 

三日目 3rdセッション

第二会場 18:25~19:05

 

SGAI KEN

舞台には「誰」と書かれた提灯がぶらさがっている。坂本龍一氏の追悼という旨のアナウンスが何度かながれた。初台駅まで行き電車に乗る実況音。演者は目出し帽。

第二会場でいちばん変わったパフォーマンスだった。

 

三日目 3rdセッション

第三会場 19:20~20:00

 

Opitope

伊達伯欣(だてともよし),二日目の第一会場でモジュラーシンセを演奏した畠山地平,ドラムに山本達久の3人編成。ダークなアンビエントに激しいドラム。

山本さんが虫の音がする筒を持ってステージを3~4周するなどのパフォーマンスも。

演奏が終わって伊達さんの挨拶になろうとした時、畠山さんが、「俺ギターやるのボケてて忘れてた」ということでアンコールを10分ほどやってくれた。

 

というわけで、3日間の伊達フェスは終了しました。この様なアンビエントのフェスはたいへん貴重なのでぜひ毎年開催のレギュラーイベントにしてほしいと思います。教授もそれを望んでいることでしょう。畠中さん、伊達さんよろしくお願いいたします。

 



その後、3月4日に 代官山 晴れたら空に豆まいて
『*追加公演* 【箱舟旅行 第26回】 角銅真実 × シャッポ』

ツーマンライブに行ってきました。

 

久々のオールスタンディング、つらい。

 

シャッポは、オリジナル曲の「ふきだし」とベンチャーズから「absolute ego dance」くらいしか知っている曲はなかった。

福原さんがボーカルをとっていたのは松浦亜弥さんの曲だそう。

 

角銅真実のほうがバンドセットで、ニューアルバム「contact」からの曲が中心でした。

オートハープを演奏する「人攫い」からスタート。「Flying Mountain」では角銅さんのマリンバの演奏を堪能しました。「contact」から以外の曲は「lullaby」、佐賀の民謡の「梅干し」が印象的でした。本編終了後、15分間のセットチェンジがあり、シャッポの3人とともにアンコール2曲やりました。

翌日には細野晴臣氏が登場し、2曲やったそうですね。うらやましい。

 




 

 

                                                                                                                                     poi

 

 

角銅真実(バンドセット)
角銅真実(vo,gu,per,etc)
巌裕美子(celllo)
古川麦(gu,cho,etc)
秋田ゴールドマン(contrabass)
光永渉(drums)

シャッポ
福原音(Gt)
細野悠太(Ba)
海老原颯(Dr)